まずはリレー飼育とは何かというと、一昔前までは殆どのブリーダーが考えもしなかった、飼育の途中で菌種を変える飼育方法のことです。
具体的には、3齢の初〜中期頃までオオヒラタケで育て、その後はヒラタケに菌種を変更します。ではなぜ一般的ではない、途中で菌種を変えるという飼育方法を発想したのか。
それはまだ若かりし頃、世界最大のオオクワガタの生息環境を調べ、生息地の植生と腐朽菌の関係を毎日のように想像していました。
そして北海道南部の植生に置き換えて考えた時、おそらくはブナやミズナラの太い立ち枯れや倒木が発生木に近いのではないかと考えました。
一本の太い立ち枯れや倒木には多くの菌類が住み分けや置き換わりを繰り返しながら同居しています。
例えば太いブナの場合は、枯れ初めの頃のキノコはサルノコシカケ科(多孔菌科)の菌種が独占していますが、年を追うごとに菌種は変化し立ち枯れや倒木が古くなるにつれ、モエギタケ科、キシメジ科、ヒラタケ科などの子実体(キノコ)が見られるようになることがあります。
そのような立ち枯れや倒木を材割りすると菌同士の境界線がはっきりと判る場合があるのですが、クワガタの幼虫は菌種の違いなどお構いなしに生息しています。
そしてある時、菌の境界線付近から得られた幼虫や蛹、成虫に大型が多いことに気が付きました。同じようなことが何度かありましたが、リレー飼育の原点とも言える確信的な出来事にその後出会います。
注)現在は材割り採集は行っておりません。
それは、主に春と秋に採れるウスヒラタケと夏に採れるタモギタケ、この両種のヒラタケ科の菌が同居している太い朽木を材割りした時のこと、またもや菌の境界線付近から採れた幼虫や蛹、成虫に大型が多かったのです。
当時のこの発見がリレー飼育の原点となりその後の発想・発展へと繋がり、同時にグランディスの飼育に応用してみようと思ったきっかけともなっています。
菌種変更『リレー飼育』は、私が長年に渡りフィールドワークとしてきた自然観察と採集から学んだ知識を基に、試行錯誤を繰り返しながら実績を積み重ねた飼育方法となりますが、グランディスの飼育における菌種の変更は自然界ではごく普通に行われ、特に腐朽した大木の場合は尚の事そうではないかと考察しています。
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