北海道南部の最強種
(2)
本稿は以前に個人的に運営していた下記HPの鍬形四方山話より抜粋したものです。



鍬形四方山話

一番強いのは誰だ


 三年前の夏に撮影した野外バトルの写真です。観察記の再掲載的なところもありますが、常時掲載している訳では有りませんから未掲載写真も含め再構成したいと思います。
 先客のミヤマペアとアオカナブンが樹液に居たところへオオスズメバチがものすごい羽音を発てて来襲してきたところです。
 早速バトルが開始されました。手始めにアオカナブンをオオアゴで噛み、追い払いにかかります。ミヤマの小型オスはこの時点で既にすごすごと退散です。
 バトルのアップがこちらです。オオスズメバチの形相のスゴイことと言ったらありません。ミヤマメスも臨戦体制です。
 ミヤマのメスも頑張ってはいましたが、結局勝てずに退きました。アオカナブンとミヤマメスが遠巻きに様子を見ています。このメンバーの中ではオオスズメバチはやはり強いです。

 野外観察を行っていますと、樹液の出る良い場所を求めて種類の違う昆虫同士によるバトルを見ることがよくあります。季節になりますと毎日の様に繰り返されますが、観察していますとそれぞれの種類や大きさによっての順位付けが大間かに判ってきます。

 私が観察を行っている地域で、これまで見てきたところでの順付けは


 1位 大型のミヤマ、ノコギリのオス
 2位 中型のミヤマ、ノコギリのオス
 3位 オオスズメバチ
 4位 小型のミヤマ、ノコギリのオス
 5位 大型のコクワガタのオス
 6位 ミヤマ、ノコギリのメス
  7位 アオカナブン、中型のコクワガタのオス


 この順位付けの下位部分は常に変動していると言っても良いかも知れません。それほど順位差は無いと思っています。

2003.1



一番強いのは誰だ 追記
(ひとり言より抜粋)

 先日72mm台のミヤマクワガタとオオスズメバチのバトルを、私としては珍しく観察してみました。

 こちらではそれほど珍しくもない光景で、結果も既に判りきったことなのですが、たまに観察してみて面白いことが判りました。

 こちらでは72mm台のミヤマクワガタは樹液争いでは最強の部類です。このクラスの個体を相手にするオオスズメバチは、ちょこまかと動き回りあまり戦いを挑みません。

 戦い方は周囲をグルグルと周り符節を噛む、これが72mm台のミヤマクワガタに対するオオスズメバチの戦い方です。

 見ていて思ったのですが、戦い方がヘタレなのです。たまに符節に噛みつくも軽々とあしらわれ相手にされず、次第に闘争本能が薄れ飛び去りました。

 他の場所で60mmくらいの個体とのバトルも見てみましたが、この時は正面から挑んでいました。ほぼ互角と言って良いほどに善戦していました。

 今回の観察から考察できたことは、オオスズメバチは自分よりも強い相手と弱い相手を区別しているのではと思えたことです。

 北海道南部のオオスズメバチは、強い相手とは戦いを避け、弱い相手(特にアオカナブンや蝶に対して)にはめっぽう強い、と言えます。

 これは何世紀も掛けて培われた本能的なものである思いますが、実に賢い生き方をしていると感じます。(子孫繁栄がその種の最大使命です)

 それと同時に、オオスズメバチの本能に刷り込みを行い続けている大型の蝦夷ミヤマは、北海道南部の最強種であると再確認できた観察となりました。

2016.8