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個体そのものはエゾ型のそれであるが、右オオアゴ先端がフジ型の形状をしている。 |
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両オオアゴ先端部が掛けているが、左右先端部に注目していただきたい。 |
ミヤマクワガタは幼虫時の生育温度によって、エゾ、基本、フジ、それぞれのタイプへと変化すると言われている。大まかには私も同様の考え方を持つのだが、生育温度だけではない遺伝的要素も多大に加味されているように感ずる。
上に掲載した個体画像を単なる奇形と片付ける方も居るのではと思う。だが、私はこのような個体を過去に数度採集している。なぜこのような個体が存在するのか、やはり遺伝的要素が影響した結果ではないかと考察している。
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私がミヤマクワガタの成虫を最初に羽化させたのは、今から30年以上前の話である。その後一時期飼育から遠ざかったが、グランディスの飼育を開始するかなり以前から、ミヤマクワガタの飼育を十数年間続けた経緯がある。当時は夏〜晩秋にかけて羽化してきた個体を、ストーブが欠かせない北海道の真冬(1月)に室内でよく飛ばして遊んでいた。
当然羽化までに3年掛かった。野外に近い状態(玄関先)での飼育では、冬になると幼虫達や新成虫は飼育ケースの土中で越冬している。(一部のメスは朽木内に蛹室を作りそこで羽化し越冬する。自然界においても、全てのメスが土中に蛹室を作るとは限らないと考察している。ただし、オスは土中内に蛹室を作る。)何度か真冬に新成虫を取り出したことがあったが、全身が霜で覆われていた。それでも暖かい室内に移し、徐々に温度を上げていくと動き出す。
このような成虫をまた越冬させると春先まではそのままである。当時から思っていたことは、幼虫を採る時期に拘らず飼育下では夏〜晩秋にかけて羽化していたことである。観察採集時に確認できる前期出現個体と後期出現個体の存在。飼育下における羽化個体のタイムラグ(夏〜晩秋)から、その存在がなんとなくではあるが認識できていた。
私のこのような飼育条件下では春先に蛹化し羽化する個体は居なかった。玄関先に置いた飼育ケースであるから、土中の温度が上がり春先に羽化する個体が居ても不思議ではなかったが、一度も経験したことが無かった。
飼育と観察を続けた結果、たぶん自然界でも同じではないかと思うようになった。実際にミヤマクワガタの幼虫を古い広葉樹の伐根から、スコップで土を堀おこし採集したことがある。殆どが土中深い部分からの採集であった。
土中深い伐根で成長する幼虫は、土中の温度と密接に係りを持つと思う。早春、北海道の土は冷たい。地域や場所によっては凍っていることもある。晩春〜初夏となってやっと暖かくなり、夏から秋にかけて深くまで暖かくなる。外気とは違い、土は温まり難く冷め難い。
ミヤマクワガタはこの土の特性を生かし、晩夏〜晩秋にかけて羽化する生態となっているように感じられる。盛夏から晩夏にかけて現れる後期出現個体は大型も結構居る。私は前年の秋〜晩秋にかけて羽化した個体がこのタイプになるのではと想像している。
ミヤマクワガタの寿命は野外活動下では短いが、羽化から寿命を迎えるまでの期間は1年間ほどはある。ただし、一度樹液を吸った天然個体はせいぜい1〜2ヶ月程度の寿命であろう。この間に子孫を残す営みも行われる。盛夏から晩夏にかけて、樹液やメスをめぐる争いが頻繁に垣間見られる。
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フジ型個体とエゾ型個体 |
エゾ、基本、フジの各タイプの出現傾向は、私が観察採集や飼育を開始した当時と今ではかなり違って来ているように思う。当時の北海道南部はエゾ型や基本型が主流であり、フジ型は殆ど見かけないタイプであった。また、個体の出現傾向はエゾ型が早く、次に基本型であった。
今現在(今年)はと言うと、発生初期よりフジ型が混じるほど変化して来ている。出現傾向はすでに過去のものとなってしまった様に思えるほど千差万別であると感ずる。近年の気温激動化の影響はミヤマクワガタの発生形態すら変化させてしまったように思えてならない。
現在では、飼育用品や情報、技術も向上し70mm以上の個体が結構容易に作出されている。(ちなみに当時の私の記録は65mmが最高であった。)
今現在の飼育条件下では、天然のそれとはかけ離れたものとなっている場合が多いように思う。そのため、ミヤマクワガタの謎はまだまだ解明されている訳では無いと感ずる。上に掲載したフジ型のアゴを持つエゾ型個体の画像が投げかける意味。これをどう解釈すると良いのか判らない、謎が多いクワガタでもある。
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