産卵材の比較から得られた幼虫飼育(添加剤)に関する一考

天然のカワラ材を産卵等に使用されている方も居ると思います。材の腐朽度合いにもよりますが、天然の程よく腐朽したカワラ材には良く産んでくれます。

産ませることを第一に考えた時、天然のカワラ材は大きな威力を発揮してくれますが、その天然のカワラ材から採れる1〜2齢幼虫の大きさと、一般的なシイタケのホダ木から採れる幼虫の大きさとを比較されたことはあるでしょうか。

随分と古い話になりますが、この事を比較したことがあります。結果から先に記しますが、1〜2齢幼虫の大きさに殆ど変わりはありませんでした。

比較時の条件を記しますが、産卵に用いたのはほぼ同径のナラ材、産卵後の保存期間と保存温度帯を同等としています。使用個体については♂の種親は同一、♀も同ラインを使用し数頭の♀で行っています。

その結果から考察されたことは、天然のカワラ材もシイタケのホダ木も、材内の成分と量は幼虫が成長する上で際立つほどの差は無いと言う事でした。

さて、それでは人工カワラ材と比較した場合はどうなったのか、今回の主題とも言えるところですが、実に興味深い結果となっています。(当店で販売している人工カワラ材を対象としています)

これも結論から先に記しますが、天然のカワラ材やシイタケのホダ木と比較したところ、人工カワラ材から採れた1〜2齢幼虫の方が若干ですが相対的に大きかったのです。

極力条件を同一として行った結果でしたから、この試行を行った当時は不思議に思えましたが、人工カワラ材は製造過程においてある物を多く使用しています。

菌を早く廻す為、歩留まりを良くする為に使用するもの。見識がある方ならば既にお判りであろうと思いますが、実は添加剤を多く使用しているのです。

どのような種類の添加剤をどの程度使用しているのかは企業秘密のため記せませんが、この添加剤の成分と量が1〜2齢幼虫が大きくなった要因であると判断しています。

(このような結果も踏まえ当店では卵で回収し孵化させることは極力控えています。それは強い幼虫を採る為で、生まれながらに虚弱な体質の幼虫は人工カワラ材の中で孵化しないか、あるいは死滅します。結果として、この段階で体力がある強い幼虫が選別されることになります)

幼虫を大きくする上で添加剤が重要な役割を果たしていることは、以上の事例からも垣間見れると思います。

当店では小型粉砕機ワンダーブレンダーWB-1で製造した独自の添加剤を用い、以前より試行飼育を行って来ました。

それは、無添加菌床における飼育(BE-KUWA48号へ寄稿した記事内に記載)や、今回紹介した人工カワラ材の事例からも、添加剤が幼虫の飼育に重要であると認識できたからに他ありません。

もう一つ追記とし特別に記しますが、2次発菌の菌糸ビンを製造する際にも、種菌や樹種と添加剤(種類と分量、及び調合比)の相性が存在します。

生きているきのこ菌を相手に、四季においてこの点を把握することが永遠の課題ともなっていますが、2015年 BE-KUWA 飼育ギネス個体である、☆6評価の95.0mm(Garda95.0)の飼育においては、この課題点が少し判ってきたことも起因していると考えています。